昭和50年、日本中を震撼させた足利銀行横領事件。
2億円を超える巨額の金を着服した23歳の女性銀行員と、彼女を騙し続けた25歳の詐欺師の男。真面目で優秀な銀行員として知られた彼女は、なぜ取り返しのつかない過ちを犯したのでしょうか。
一人の女性が転落していく過程と、その背景にある愛と欺瞞の物語を、2人の犯人、大竹章子、阿部誠行の生い立ちから紐解いていきます。
- 大竹章子のプロフィール・生い立ち
- 阿部誠行のプロフィール・生い立ち
- 足利銀行横領事件概要
- 阿部誠行との関係
- 逮捕・判決
- 大竹章子の現在は?
- 阿部誠行の現在は?
#アンビリーバボー#足利銀行横領事件
— ぞふぃ~ (@sophieyoshida) October 31, 2019
いやー
恋の罠つうやつですか…
女って、何でかなぁ…
足利銀行横領事件、2人の犯人、大竹章子と阿部誠行について興味のある方は、是非ご覧ください。
大竹章子のプロフィール・生い立ち
- 出生:昭和28年生まれ(事件当時23歳)
- 年齢:71歳(2024年現在)
- 出身:栃木県栃木市
- 学歴:県立栃木商業高校卒業
- 兄弟:3人きょうだいの真ん中(姉、弟)
- 両親:農業とビール用原料麦の運送業を営む
- 職歴:昭和46年4月、18歳で足利銀行栃木支店に入行
貸付係として勤務
栃木の郊外で育った大竹章子の幼少期は、働き者の両親の姿を見て育った清廉な日々。毎日黙々と仕事に励む両親を手伝い、特にトイレ掃除には人一倍熱心。
母親が「もうやめといたら」と止めるほどの几帳面さで、「母ちゃんは黙って座ってればいいんだよ、私が好きでやってんだから」と笑顔で答える優しい娘でもありました。
学生時代の彼女を知る人々は、異口同音にその真面目さを語ります。栃木商業高校ではテニス部のキャプテンを務め、成績は常にトップクラスを維持。20番以下に落ちたことはなかったといいます。
そんな優等生だった彼女は、学校長推薦で足利銀行栃木支店への就職を果たします。
阿部誠行のプロフィール・生い立ち
- 出生:昭和26年生まれ(事件当時25歳)
- 年齢:73歳(2024年現在)
- 出身:宮城県登米郡登米町
- 高校:県立登米高校卒業
- 大学:立正大学中退
- 親 :父は下駄屋を営む地元の名士(後に電子工業の工場長)
- 職歴:千葉の自衛隊に入隊経験あり
- 他 :前科あり(強盗)
事件当時、東京に妻あり
阿部誠行の生い立ちは、表面上は恵まれたものに見えました。地元の名士である父を持ち、大学進学も果たしています。
しかし、大学時代、父親の事業失敗により家族で関東に移住。この頃から競馬や競輪に入り浸るようになり、2年で大学を中退。人生が暗転して行きます。
その後、千葉の自衛隊に入隊するも、船橋競馬場近くの蕎麦屋に強盗に入り逮捕。執行猶予判決を受けた後、東京に出てきた彼は、結婚していながら複数の愛人を持つ不誠実な生活を送っていました。
足利銀行横領事件概要
- 発生時期:昭和49年1月~昭和50年7月
- 横領総額:2億1190万円
- 横領回数:延べ63回
- 発覚 :昭和50年7月
- 手口 :上司の検印を白地の手形や伝票に押し、後日金額を記入して現金化
- 犯行時の年齢:大竹章子23歳、阿部誠行25歳
この事件の特徴は、その巧妙な手口にあります。大竹は勤務中、隙を見て窓口隣に座る調査役の検印を白地の手形、伝票、副伝票に押し、それをハンドバッグに入れて持ち帰りました。
自宅で金額を書き込んだ上、後日、銀行の忙しい時をねらって現金化するという手の込んだ方法をとっています。
興味深いのは、この手口を考え出したのが大竹本人ではなく、阿部誠行だったという点です。彼は「5000万円が必要だ」と持ちかけた際、「君は銀行の貸付係だろう」とほのめかし、横領の方法を教唆したのです。
阿部誠行との関係
- 出会い:昭和48年8月、急行「松島4号」車内
- 初対面時の偽名:石村
- 偽った身分:国際秘密警察員
- 最初の金額:150万円(大竹の預金から)
大竹と阿部の出会いは、昭和48年8月のお盆前、仙台行きの急行「松島4号」の車内でした。同僚の女友達と旅行に向かう大竹に、通路を挟んで座っていた阿部が声をかけます。
「君たち学生?」という何気ない言葉から始まった会話は、彼の洗練された物腰と巧みな話術によって、大竹の心を捉えていきました。
同僚は阿部の接近に警戒的でしたが、大竹は違いました。仙台までの2時間があっという間に感じられ、別れ際、女友達には気付かれないよう、宿泊先の電話番号を阿部に渡しています。
その夜、宿に電話をかけてきた阿部との逢瀬で、大竹は初めてキスを経験します。
大竹の日記には、その後の展開が克明に記されています。阿部は「君にだけは打ち明けるが、僕は国際秘密警察員なんだ」と告白し、結婚への期待を匂わせました。
恋愛経験の少なかった大竹は、この秘密を打ち明けられたことに運命的なものを感じ、完全に心を奪われていきます。
最初の金銭の授受は、出会いからわずか8日後のことでした。阿部は「結婚したいが、今の仕事を辞めるには大金が必要だ。辞めなければ命を狙われる」と告げ、大竹から150万円を借り出します。さらにその日、大竹は初めてラブホテルへ連れて行かれ、阿部に処女を捧げることになります。
その後の関係は、愛情と支配、献身と搾取が絡み合った歪んだものへと変質。阿部は「来年の春には結婚できる」「あと5ヶ月で結婚できる」と甘い言葉を繰り返し、大竹はそれを信じ続けました。
日記には「私は彼の奥様なんだから」という言葉が繰り返し登場し、大竹の信じたい思いが読み取れます。
2人の関係が深まるにつれ、阿部の金銭要求は増大。当初は大竹の預金から、次いで父親名義の預金から工面していましたが、ついに阿部は「組織を抜けるには5000万円が必要だ」と告げ、銀行の金に手を出すことを暗に要求。
この頃には既に、大竹は阿部の言葉に完全に支配されており、彼の要求を拒むことができない状態に陥っていました。
二人の逢瀬は2年間で62回を数え、そのうち54回で金銭の授受がありました。大竹の日記の調子は次第に暗くなり、最後は数字だけを記すようになっています。
昭和50年7月11日、最後の記載「500万円」を最後に、日記は途絶えることになります。
逮捕・判決
- 大竹章子の逮捕:昭和50年7月21日
- 阿部誠行の逮捕:昭和50年9月18日(東京・五反田駅西口)
- 大竹章子の判決:懲役3年6カ月
- 阿部誠行の判決:懲役8年
逮捕に至る経緯は劇的な展開を見せました。昭和50年7月、捜査の手が迫りつつあった中、阿部は最後まで大竹に金を要求。「ニュー栃木ボウル」での待ち合わせを指示します。
しかし、現場に車で現れた阿部は警察の張り込みに気づき、時速120キロの猛スピードで逃走。その後、愛人とともに逃亡生活に入りました。
大竹章子の逮捕は7月21日。取調室では冷房もない暑い中で、それでもなお「あの人が、必ずわたしも助けにきてくれる」と阿部への信頼を失っていませんでした。しかし、阿部の逮捕報道を聞いた時、その思いは一転します。
阿部誠行の逮捕は、事件発覚から約2ヶ月後の9月18日。東京・五反田駅西口で愛人とともに逮捕されました。逮捕時、2億円以上を着服させた男の所持金はわずか250円だったといいます。
裁判では、大竹章子に懲役3年6カ月、阿部誠行には懲役8年の実刑判決が下されました。これは日本の三大銀行巨額横領事件の中では、滋賀銀行事件の山県元次の懲役10年、奥村彰子の懲役8年、三和銀行事件の南敏之の懲役5年、伊藤素子の懲役2年6ヶ月と比較しても、相応の重さの判決でした。
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大竹章子の現在は?
- 出所後の消息は不明
- 逮捕時の発言が最後の公になった言葉
逮捕された際の大竹の言葉は、痛々しいほどの怒りと絶望に満ちていました。
- 「あの男を、一生、刑務所から出さないで…」
- 「死刑にしてほしいほどなんです」
- 「女の生き血を吸って生きている、悪い男なんです」
これが、彼女の公に残された最後の言葉となっています。
阿部誠行の現在は?
- 出所後の消息は不明
- 生存していれば現在72歳前後
阿部は大竹から騙し取った金で、競馬予想情報会社「国際ユニオン開発センター」を設立し、六本木でクラブも経営していました。
しかし、その豪遊生活も長くは続きませんでした。逮捕時の所持金が250円だったという事実は、彼の放蕩的な生活を象徴しています。
まとめ
足利銀行横領事件は、純粋な愛を危険な妄信へと変えた悲劇的な物語です。
几帳面で真面目、優等生として知られた一人の女性が、巧妙な嘘と甘い言葉に騙され、取り返しのつかない過ちを犯すまでの過程は、人間の脆さを浮き彫りにしています。
この事件が教えているのは、愛という感情が時として理性を狂わせ、善良な人間をも転落させる危険性です。また、表面的な印象や言葉だけを信じることの危うさも示しています。
現代においても、形を変えた同様の犯罪が後を絶たないことを考えると、この事件の教訓は今なお色あせていないと言えるでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。