新型コロナウイルスのパンデミック初期、日本の医療対応の最前線に立った医師がいます。神奈川県の医療危機対策統括官として知られる阿南英明氏です。
彼の活動は、日本の感染症対策の礎を築き、その後の医療体制のモデルケースとなりました。
本記事では、医療現場での豊富な経験と卓越した危機管理能力を持つ阿南氏のプロフィール、経歴を辿りつつ、彼の感染症対策にかける思いを深堀っていきます。
- 阿南英明氏のプロフィール(学歴)
- 阿南英明氏の経歴
- ダイヤモンド・プリンセス号対応
- 現在の活動
「長続きする通常の医療へ」。国のコロナ対策に助言する専門家組織の一員で、神奈川県の対策の指揮をとってきた医師の阿南英明さんは「覚悟を決めて戻さないと戻れなくなる」と主張してきました。経緯や思いを聞きました。https://t.co/F5IX2DtmfO #新型コロナウイルス
— 朝日新聞アピタル (@asahi_apital) May 9, 2023
コロナ初期の「神奈川モデル」、その立役者の一人として有名な阿南英明氏について興味のある方は、是非ご覧ください。
阿南英明氏のプロフィール(学歴)
- 生年:1965年
- 年齢:59歳(2024年時点)
- 出身:東京都
- 学歴:1991年 新潟大学医学部卒業
横浜市立大学救命救急センターでの勤務開始
阿南英明氏は1965年に東京都で生まれの59歳。
1991年に新潟大学医学部を卒業後、救急医療の道を選択。救命救急センターでの経験を重ねる中で、迅速な判断力と行動力を磨きます。
医師としてのキャリアの初期段階から、救急医療の最前線で数多くの経験を積み重ねてきた阿南氏。この現場経験の蓄積こそが、後の新型コロナウイルス対策における危機管理能力の基盤となって行きます。
阿南英明氏の経歴
- 1991年 新潟大学医学部卒業
- 横浜市立大学救命救急センター勤務
- 藤沢市民病院救命救急センターへ異動
ドクターとしてのキャリア初期における救急医療最前線での経験は、後の危機管理統括官としての手腕獲得に大きな影響を与えたと考えられます。
- 2012年 藤沢市民病院救命救急センター長・救急科部長
- 2019年 藤沢市民病院副院長
- 2020年 神奈川県医療危機対策統括官
- 2021年 神奈川県理事(医療危機対策担当)
2024年、DMATの一員として能登半島地震の被災地での医療支援活動に従事。同年4月からは県立病院機構理事長に就任。この人事について黒岩祐治知事は「職員の意識改革を進めていくためのリーダーシップに期待したい」と説明。
阿南氏も「安全は文化醸成が大事だ。一番適切な方法論が何かを早急に探りたい」と抱負を述べています。
ダイヤモンド・プリンセスでの活動
- 2020年2月、横浜港に停泊したクルーズ船で大規模な集団感染が発生
- 乗員・乗客3,711人という前例のない規模での感染症対策に直面
この時、神奈川県は重大な課題に直面していました。検疫法や感染症法では、感染患者を指定医療機関に搬送するのは地元自治体の仕事とされていたのです。
しかし、県内の感染症対応可能な病床はわずか74床。一方で、陽性患者は1日あたり最高で99人を記録する日も。
ここでとった対応は:
- 搬送の優先順位を決めるカテゴリーを作成
- 熱や咳が出て具合の悪い人を優先
- 重症化しやすい高齢者を優先
- 陽性でも症状がなく元気な人は後順位に
この際、船内のDMATチームと、まったく打ち合わせをしていないにもかかわらず、同じ基準での対応方針が一致していたことは特筆すべき事実です。現場の医療者として同じ視点を持っていたことの証左といえるでしょう。
そしてこの後:
- 全国の医療機関への分散搬送を実施
- 最終的に16都府県150の病院へ769人の患者を搬送
この経験から、阿南氏は重要な知見を得ることになります。「軽症者、無症状者を医療機関に入れてはならない」という原則です。これは後の「軽症・無症状者は自宅・ホテルで療養」という方針につながり、日本の新型コロナウイルス対策の基本となりました。
中でも藤田医科大学岡崎医療センターと自衛隊中央病院の協力は、危機的状況を打開する大きな転機に:
- 藤田医科大学:無症状者を長距離バスで搬送
- 自衛隊中央病院:有症状患者を受け入れ
このような経験は、後の「神奈川モデル」の確立につながっていきます。具体的には:
- 高齢者やハイリスクの方への特別な配慮
- 軽症・無症状者のホテル・自宅療養
- 入院先マッチングなど情報収集基盤の確立
- ICUの負担軽減のための人員・物資のリソース最適化
船内での対応は、当初、国内外のメディアから厳しい批判を受けました。しかし、2月5日の乗客への自室待機要請以降、大きな感染の拡大は抑えられ、2月11日には日本環境感染学会のチームが船内の感染対策をチェックし「問題なし」との判断。
また、2月15日頃までには、発熱患者の早期発見や陽性患者の搬送手順などのルーティンが確立し、それまで30~40人いた新規発熱患者は1桁にまで減少。
感染制御に成功したことが確認されました。
現在の活動
- 2024年4月より横浜県立病院機構理事長に就任
- 任期は4月1日から4年間
- 県内5病院の運営責任者として新たな挑戦へ
就任の背景には、県立こども医療センターでの医療事故への対応という課題がありました。外部有識者委員会から体制の不備を指摘されており、改革が求められています。
阿南氏は就任にあたり、「確立された医療安全体制なのか?医療スタッフはいつでもどこでも患者フレンドリーか?と問われたときに、胸を張ってYESといえる組織であり続けるために、改めるべきは改め、良いところは活かす」という方針を示しました。
また、「高い技能と志を持つ貴重な医療人材を活かし、患者さんやそのご家族、神奈川県民にやさしい医療の提供を目指す」との抱負を語っています。
奥歯の詰め物がとれました 😭
— ジョン・粉🍀備えて安心◎ (@PrepperJohnCon) February 27, 2023
救命救急医の阿南英明医師は東日本大震災時に DMATの調整を指揮しました。岩手県大船渡市の被災地を訪れ 見たこともない津波の被害に圧倒されたそうです。その彼が #南海トラフ地震 が発生すれば 深刻な #医師不足 に陥り『ヒーローは助けに来ない』と警告しています。 pic.twitter.com/XpS7NxNCe4
まとめ
阿南英明氏の歩みは、救急医療の現場から始まり、新型コロナウイルス対策の最前線、そして医療行政の中枢へと展開してきました。
特にダイヤモンド・プリンセス号での対応は、日本の感染症対策の転換点。その知見は「神奈川モデル」として結実し、全国の感染症対策に大きな影響を与えることとなります。
特筆すべきは、現場主義に基づく実践的なアプローチです。形式的な対応ではなく、実際の医療現場のニーズに即した柔軟な対策を講じる。これは、彼の救急医としての経験が活かされた結果ではないでしょうか。
阿南氏の横浜県立病院機構理事長としての取り組みにも期待がかかります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。