空間には物語がある—。日本を代表するディスプレイデザイナーの持木慎子(もちき ちかこ)さんの作品を目にするたびに思い浮かぶ感想。彼女は25年以上にわたり銀座のショーウインドウという商業空間に芸術的な生命を吹き込んできました。
単なる商品陳列にとどまらない、印象に残る空間演出で、見る人の心を揺さぶる作品を生み出し続けている持木さん。その独特な感性は、建築家のルイス・カーンや彫刻家のイサム・ノグチなど、世界的なアーティストたちからも影響を受けています。
本記事では持木慎子(もちき ちかこ)さんのプロフィール、経歴を振り返りりつつ彼女の作品の独自性に迫ります。
- 持木慎子(もちき ちかこ)さんのプロフィール
- 持木慎子(もちき ちかこ)さんの家族構成
- 持木慎子(もちき ちかこ)さんの経歴
- 空間デザイン・こだわり
アートディレクションは持木工房の持木慎子さん。
— Naffy (@Na_ff_y) December 5, 2020
イラストから抜け出してきたかのような立体のトナカイやシロクマも制作してくださいました。
館内のあちらこちらに展開されています。
機会がありましたらぜひ。 pic.twitter.com/834X4bqIpQ
空間デザイナー、持木慎子(もちき ちかこ)さんについて興味のある方は、是非ご覧ください。
持木慎子(もちき ちかこ)さんのプロフィール
プロフィール
埼玉県三郷市出身で、現在は東京都狛江市在住の持木慎子さん。1970年生まれの54歳(2024年現在)です。
空間デザイナーとしての顔の他にも、一般社団法人日本空間デザイン協会の理事や東京デザイン専門学校の非常勤講師として、次世代のクリエイター育成にも携わっています。
趣味は動物との暮らしで、ヒョウモントカゲモドキやフクロモモンガ、ドーベルマンと共に生活しています。また、特技としてチェーンソーカービングを持つなど、創造性豊かな一面も。
学歴
1992年に宝仙学園短期大学を卒業しています。同校は2009年に4年制大学「こども教育宝仙大学」として生まれ変わるまで、多くのクリエイティブな人材を輩出してきた教育機関でした。
持木慎子(もちき ちかこ)さんの家族構成
二児の母として知られる持木さん。仕事と家庭の両立は決して容易ではなかったはずです。特に、ショーウインドウのディスプレイ制作は深夜から早朝にかけての作業も多く、家族の理解と支援なしに継続は難しかったことでしょう。
そんな中でも第一線で活躍を続けられているのは、ご家族の理解があってこそ。ただし、ご主人や子供たちのプライバシーを守るためか、詳細な情報は公開されていません。
持木慎子さんの経歴
空間デザイン・きっかけ
992年、宝仙学園短期大学を卒業した持木さんは、すぐに「持木工房」を設立。当時はまだ「空間デザイン」という概念自体が一般的ではなく、特に女性の進出が珍しい分野でした。
しかし、幼い頃から空間を「物語を紡ぐキャンバス」として捉えていた持木さんに迷いはなく、その独特な視点を核に、後の作品づくりを進めていきます。
これまでの活動
銀座の街並みが大きく変わりゆく1990年代後半、持木さんは商業空間に新しい価値を見出していきます。
その中でも話題となったのが、バブル崩壊後の銀座で手がけたショーウインドウ。当時の消費の冷え込みを逆手にとり、「物を買う」だけでなく「空間を体験する」という新しい提案を始めたのです。
そして、その実力は高く評価され、2007年には銀座ディスプレイデザインコンテストで最優秀賞を受賞。また、1995年から2015年まで、DSA日本空間デザイン賞に継続して入選を果たしています。
2011年の東日本大震災後には、それまでの「魅せる」ことを主眼としたデザインから、「祈り」や「希望」といったメッセージ性を感じさせる作品にも挑戦。
常に時代に寄り添う空間演出への試行錯誤は続きます。
そして現在、持木さんの仕事の領域は、ショーウインドウの企画・デザインはもちろん、パブリックスペースのオブジェ制作、テレビや舞台のセット、小道具、衣装デザインまで、空間全体のトータルプロデュースにまで広がっています。
空間デザイン・こだわり
単なる商品ディスプレイや装飾的な空間づくりではなく、そこに確かな物語を織り込んでいく—。それが持木さんの創作スタイル。
物語を紡ぐ三つの手法
光と影が織りなす物語
持木さんのディスプレイデザインには、建築家ルイス・カーンの空間理論からの影響が見られます。特に光の扱い方において、時間とともに変化する自然光と人工照明を組み合わせることで、見る人の感情に訴えかける空間を生み出す手法は見事です。
素材が語りかける物語
イサム・ノグチの影響は、素材の扱い方に表れています。自然素材の持つ本来の質感や形状を活かしながら、現代的な演出を加えるという手法は、持木さんの作品の特徴の一つです。
感情を織り込む希望の物語
代表作「星に願いを」(2011年)は、震災後の人々の心情を空間として表現。
ここではマルセル・ブロイヤーの「異素材の対比」という考え方を応用し、ガラスの地球を抱く少女と、それを見守る動物たちという構成で希望のメッセージを伝えています。
さらに、銀座通りの反対側から見ると少女のシルエットがクリスマスツリーに見える、という緻密な計算も施されていました。
このように、持木さんは商業空間という枠組みの中で、光や素材、構図を巧みに操ることで、見る人の心に響く空間を作り出しています。そして、それはきっと持木さんが蒔いた物語の種が、時に光となり、時に素材となり、時に空間の余白となって、見る人の心の中で豊かな物語へと育っていった結果。
商業空間という制約の中で、アートとしての深い表現を追求し続ける、持木さんならではの創造の形なのです。
銀座のショーウインドウを25年以上にわたってデザインし続けてきた持木さん。その作品は、時代とともに変化する人々の思いに寄り添いながら、常に新しい表現を追求し続けています。
まとめ
空間デザイナーとして四半世紀以上にわたり第一線で活躍を続ける持木慎子さん。その作品は、商業空間という制約の中にありながら、芸術性と物語性を備えるもの。
建築やアートの巨匠たちからインスピレーションを得つつも、独自の解釈で現代に適応させた表現方法は、多くのクリエイターに影響を与え続けています。
そんな彼女の作品は、今後も、銀座のショーウインドウを舞台に、人々の心に響く世界を築き続けていくことでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。